悪性リンパ腫は血液のがんでは最も患者数が多く、非ホジキンリンパ腫は人口10万人に対して10人強です。特に中高年に多く、高齢化の影響で患者が増加傾向にあります。有名人では、漫画家の鈴木義司さん(2004年、享年75歳)や名脇役で知られた俳優の内藤武敏さん(2012年、享年88歳)も悪性リンパ腫で亡くなっています。, 済生会本部 : 〒108-0073 東京都港区三田1-4-28(三田国際ビルヂング21階) TEL: 03-3454-3311 / FAX: 03-3454-5576. 2020 Social Welfare Organization Saiseikai Imperial Gift Foundation, Inc. All rights reserved. 超高齢社会となった現在、悪性リンパ腫の患者数は年々増えています。悪性リンパ腫は病型が極めて多く、進行のスピードや治療法もそれぞれの病型によって異なるのが特徴です。さらに、全身のあらゆる部位で発症するため、部位に応じた治療選択も大切です。近年、薬や治療法の開発が大きく前進し、一部の病型のリンパ腫の治療成績は飛躍的進歩をとげています。悪性リンパ腫の中でも、罹患率が高い病型や新たな治療法が登場してきた4種類の悪性リンパ腫の治療法を解説します。, 悪性リンパ腫は、生体の免疫機能を担う白血球の一種であるリンパ球ががん化する病気です。罹患数は1985年に人口10万人あたり5.5人だったのが年々増え続け、2010年には18.7人、2013年には20.2人にまで増加しています。ほかのがん種と比べても悪性リンパ腫の増え方は抜きん出ています。罹患数は、男性のほうが女性より少し多く、発症のピークは70歳代です。, 悪性リンパ腫という病名は、リンパ球のがんをまとめた総称で、実際にはさまざまな病型からなっています(表1参照)。WHO分類(2017年版)では80ほどの病型が示されており、大別すると、病気の発見者の名前にちなんで命名されたホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、日本では非ホジキンリンパ腫が9割ほどを占めています。, 悪性リンパ腫と同じ「血液のがん」である白血病の多くは、血液が作られる過程の未熟な白血球(顆粒球〔好中球、好酸球、好塩基球〕、単球、リンパ球〔Tリンパ球、Bリンパ球など〕)の細胞ががん化するのに対して、悪性リンパ腫では、がん化するのは、成熟したリンパ球がほとんどです(図1参照)。また、白血病はがん化した細胞が血液によって骨髄中から全身に運ばれるのに対して、悪性リンパ腫は、身体の特定の場所に腫瘤という塊をつくりやすい性質があります。腫瘤が発生する部位について大まかにいうと、免疫システムの防衛基地であるリンパ節に発生するタイプ、リンパ節の外の胃や骨髄などの臓器(節外臓器)に発生するタイプ、リンパ節と節外臓器の両方に発生するタイプが、それぞれ3分の1ずつあります。, 非ホジキンリンパ腫では、無治療の場合の予後(自然史)を予測する臨床分類として、悪性度によって、3つに分類されています。「低悪性度(インドレントリンパ腫)」はがん細胞の増殖速度が遅く年単位で病気が進行するもの、「中悪性度(アグレッシブリンパ腫)」は月単位で進行するもの、「高悪性度(高度アグレッシブリンパ腫)」は増殖速度が速く週単位で進行するものです。どの悪性度に分類されるかは、病型ごとにほぼ定められています。, 悪性リンパ腫のはっきりとした原因は明らかになっていません。関与が考えられる要因には、遺伝子の異常、免疫亢進や免疫低下などの免疫異常、およびウイルスや細菌の感染がありますが、そのいくつかが次第に蓄積してから発症する「多段階発がん」であることが知られています。, 免疫異常による慢性の炎症が発症に関係しているという報告もあります。自己免疫疾患の1つである橋本病では甲状腺に慢性の炎症が起こりますが、甲状腺のB細胞リンパ腫の患者さんを調べたところ、95%以上が橋本病をもっていたという報告があります。橋本病の患者さんのうち悪性リンパ腫を発症するのは数%ですが、慢性の炎症から浸潤したリンパ球ががん化することによって悪性リンパ腫が発症することがあると考えられています。, また、かつて国民病といわれた肺結核では、膿胸という胸腔内に膿性液が溜まる病状に至る人が多くいました。膿胸には手術などの処置が行われますが、遷延した膿胸の慢性炎症から数十年後に胸腔壁にEBウイルス(Epstein Barr Virus)が関与した悪性リンパ腫が発生する例が多く見られたのです。さらに、胃炎や胃潰瘍を引き起こすピロリ菌感染者の胃壁でも、悪性リンパ腫の危険性が高まることが指摘されています。, 最近注目されているのは、慢性関節リウマチと悪性リンパ腫との関係です。慢性関節リウマチの患者さんは悪性リンパ腫の発症リスクが高くなることが知られています。特に、慢性関節リウマチの第一選択薬の1つである免疫抑制剤のメトトレキサート(製品名:メソトレキセート、リウマトレックスなど)を服用していると、ときに悪性リンパ腫を発症することが報告され、重篤になると死に至るケースもあります。, メトトレキサート関連の悪性リンパ腫は、メトトレキサートの服用を中止すると数割の患者さんで自然によくなることもわかっています。したがって、メトトレキサート服用中に発熱したり、リンパ節が腫れた場合などは、医師と相談して服用の中止を検討すべきでしょう。, 悪性リンパ腫は自覚症状によって発見されるケースが少なくありません。首や脇の下、足の付け根などのリンパ節が、触れるとグリグリとした塊がわかるほどに腫れてきたために医療機関を受診し、悪性リンパ腫が見つかることがあります。また、健診で腹部や胸部の深い部分のリンパ節が腫れているのが指摘され、悪性リンパ腫が疑われることもあります。, 症状としては、発熱、盗汗(寝汗)、体重減少も重要です。この3つは、「B症状」と呼ばれる悪性リンパ腫の特徴的な全身症状です。これらの症状がない場合と区別して各ステージは(病期)、B期またはA期と分類されます。この3つの症状が出るのは、リンパ球の機能の1つに免疫応答があり、免疫応答を調節するときにサイトカインと呼ばれる特殊なタンパク質が放出されるためです。例えばインフルエンザに罹患したときは、免疫応答によりこのサイトカインが放出され、発熱などの症状が現れます。ところが、リンパ球のがん化が進むと免疫応答に狂いが生じ、サイトカインが過剰に継続して放出されるようになって発熱、盗汗(寝汗)、体重減少といった持続的な症状があらわれます。, 悪性リンパ腫を疑う場合は、触診、血液検査、造影CT検査などを行います。最終的に悪性リンパ腫の診断と病型分類を確定するために欠かせないのが、リンパ節や腫瘍の一部を切り取って顕微鏡で観察する生検です。さらに、正確な組織型を知るためには細胞表面抗原マーカー検査、染色体検査、遺伝子検査も重要です。, 悪性リンパ腫は、全身のどの部位にも発症する可能性があるため、治療を始める前にはどの程度まで病気が広がっているかを調べるため、超音波検査、MRI検査、消化管内視鏡検査なども必要に応じて行いますが、ステージングと呼ばれる病期(ステージ)決定のためにはリンパ腫の広がりと悪性度を評価できるPET/CT検査は必須です。, 病気の勢いや悪性度を調べる検査として、血清LDH(乳酸脱水粗酵素)、CRP(C反応性タンパク)、可溶性インターロイキン2受容体の検査も重要です。このうちLDHはリンパ球が増殖すると数値が上昇するとともに、悪性度が高い悪性リンパ腫では数値が上がるため、治療方針を決定するうえでも大切な検査といえます。, 例えば、初診時にリンパ節が大きく腫れていてもLDHが正常値ならば急いで治療を開始しなくてもよい低悪性度である可能性が高く、また、逆にリンパ節が腫れてLDHも異常な高値を示している場合は高悪性度である可能性を考え、一刻も早く診断して治療を始めるためにそのまま入院することもあります。, 最終的な治療方針は、さまざまな検査による正確な病理診断と、病気の広がりや進行度による病期分類(表2参照)にもとづいて、腫瘍の部位や大きさ、全身状態と年齢を考慮のうえ、具体的な治療方法が選択されます。, 各病期はB症状の有無により、BまたはAに分ける造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成, 悪性リンパ腫の治療では、がん化した細胞が有する膜表面の蛋白抗原または増殖するために重要な遺伝子やタンパク質をピンポイントで攻撃する分子標的薬が次々と登場し、従来からの抗癌剤、放射線療法と合わせて効果を上げています。このため、どの分子標的薬が効くタイプのリンパ腫なのかを見極めることが大切です。, 例えば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)の治療を劇的に変えたリツキシマブ(製品名:リツキサン)は、Bリンパ球の表面に発現しているCD20抗原というタンパク質に結合する抗体としてつくられた薬剤です。ほかにも抗CD30抗体とチューブリン毒素を結合させたブレンツキシマブ・ベドチン(製品名:アドセリス)、抗CCR4抗体であるモガムリズマブ(製品名:ポテリジオ)などもあります。, CD20は、B細胞リンパ腫の9割以上で陽性です。悪性リンパ腫で一番患者数が多いびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と次に多い濾胞性リンパ腫(FL)に有効であるため、悪性リンパ腫の過半数でリツキシマブが効くことになります。これに対してCD30が陽性になるのはホジキンリンパ腫と未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)のほぼ100%で、CCR4が陽性になるのは成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の95%以上、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の約30%です。, びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、日本人の非ホジキンリンパ腫の中で3割強を占める最も発生頻度の高い病型です。現在の標準治療はR-CHOP療法です。これは、リツキシマブ+シクロホスファミド(製品名:エンドキサン)+ドキソルビシン(製品名:アドリアシン)+ビンクリスチン(製品名:オンコビン)+プレドニゾロン(製品名:プレドニン)を併用する多剤併用療法です。病期I、II期の限局期と病期III、IV期の進行期とでは治療が異なり、限局期では腫瘍径が10cmを超えるような巨大腫瘤があるかないかでも異なります(図2参照)。, 限局期で巨大腫瘤なしの場合は、「R-CHOP療法3コースを行ったあとに放射線治療を行う方法」と、「R-CHOP療法を6~8コースを行う方法」の2つの標準治療があり、効果は同等です。一般的には、腫瘤のある部位や患者状態によって選択されます。例えば、のどの周辺の腫瘤では、放射線を照射すると飲食にかかわる口腔内の障害を免れない場合があります。そのような場合は、放射線を併用しない「R-CHOP療法6~8コース」を選択することがあります。また、高齢者では、抗がん剤を短期間に抑えて心毒性や末梢神経毒性などの副作用を軽減するため「R-CHOP療法3コース+放射線治療」を選択することもあります。, 初回治療で過半数のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんは治癒します。寛解になったものの再発した場合と寛解に至らなかった難治性の場合は、サルベージ治療と呼ばれる救援化学療法が行われ、R-CHOPより少し強い薬の併用化学療法が行われます。この救援療法で効果が認められた比較的若年者(65歳未満程度)の場合、自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法を行うことで一部の患者さんは治癒も可能となります。, 再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、CAR-T療法(キメラ抗体受容体T細胞療法)という新しい治療法が登場し注目されています。この治療法は、患者自身の血液からT細胞を採取し、B細胞リンパ腫などで発現するCD19というタンパク質を特異的に認識してがん細胞を攻撃するようにした遺伝子を導入して行う、遺伝子改変T細胞療法です。米国で昨年、世界で初めて小児を含む25歳以下の再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の治療薬としてチサゲンレクロイセル(製品名:キムリア)が承認され、日本でも今年4月、25歳以下の再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病とともにCD19陽性再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫について承認申請が行われています。, 巨大病変 : 最大腫瘍径が10cmを超える、または縦隔病変の最大横径が最大胸郭内径の1/3以上造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成, 日本で近年、患者数が他のリンパ腫よりも明らかに増えているのが濾胞性リンパ腫(FL:follicular lymphoma)です。もともと欧米では多く日本では少ないタイプでした。ここ30年ほどで増加傾向にあり、生活スタイルの欧米化との関連が指摘されています。, 濾胞性リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同じB細胞由来のリンパ腫ですが、一般的に進行が遅いという特徴があり、低悪性度の代表といえます。このため、治療方針を決めるにあたり、病期で大多数を占める進行期(IIIまたはIV期)の場合に重視されるのは腫瘍の量です(図3参照)。腫瘍の量で7.5cm以上のものが1個以上あるとか、3cm以上が3個以上ある、などの高腫瘍量のときはリツキシマブを併用した化学療法を行いますが、低腫瘍量のときは濾胞性リンパ腫と診断がついてもすぐに治療を開始するのではなく、濾胞性リンパ腫による症状や臓器障害をきたすまで無治療で経過観察を行う「ウォッチフル・ウェイティング」がしばしば選択されます。濾胞性リンパ腫は低悪性度のリンパ腫であり進行はゆっくりなため、低腫瘍量であれば症状も出にくく、無治療でも命にかかわる状況ではないからです。, ただし、ここで注意したいのは、低悪性度のリンパ腫は進行がゆっくりでも治りにくい病気であることです。中悪性度・高悪性度のリンパ腫は週単位、月単位で病状が進む進行性であるため、治療を開始しても早期に亡くなる患者さんが多いですが、治療が奏効した場合では完治する患者さんが多いです。, 低悪性度のリンパ腫では進行がゆっくりであり、治療を行うと病変が消える(完全寛解といいます)こともあるものの、何年か経つと再発します。診断がついて早く治療を開始しても、症状があらわれてから治療を開始しても再発することに変わりはなく、低腫瘍量の場合はどちらにしても生存期間に差はあまりなく、治らないまま経過することが多いのが特徴です。, 治療すれば何かしらの副作用が現れます。そもそもリンパ腫による症状がない場合は通常の生活が送れるのだから、治療の副作用による支障は避けたいという場合などで、腫瘍量が多くないときは、治癒が望めない濾胞性リンパ腫では無治療経過観察が選択されます。実際、濾胞性リンパ腫の診断から5年後の段階で治療を開始しなくてもよい患者さんは数割います。さらに、1割程度の患者さんではそのまま病変が小さくなって、自然寛解していくこともあります。, MALTリンパ腫(mucosa associated lymphoid issue)は、ゆっくり進むのが特徴です。発症原因として慢性的な炎症反応との関連が指摘されています。, 病変の多くは胃に現れ、胃のMALTリンパ腫の場合、胃に感染したヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による慢性炎症が病気に関与していると考えられています。このため、胃のMALTリンパ腫ではピロリ菌感染の有無を調べることが重要です。ピロリ菌検査の結果が陽性で、胃に限局したMALTリンパ腫なら、ピロリ菌の除菌だけで7~8割は長期完全寛解するといわれています。, 末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)は、リンパ球のT細胞ががん化する比較的まれな非ホジキンリンパ腫でいくつかの病型からなり、病気が月単位で進行する中悪性度に分類されています。, 基本的な治療は化学療法ですが、B細胞リンパ腫で用いられるリツキシマブはCD20陰性のT細胞リンパ腫では効果が期待できないため、末梢性T細胞リンパ腫ではリツキシマブを除いたCHOP療法が行われます。ただし、CHOP療法の治療成績は必ずしも良好ではなく、二次治療以降では、臨床試験への参加も治療選択肢の1つとなっている状況です。, そこへ最近、再発または難治性のPTCLについては、フォロデシン(製品名:ムンデシン)、プララトレキサート(製品名:ジフォルタ)、ロミデプシン(製品名:イストダックス)の3つの薬が相次いで承認されました。このうちフォロデシンは酵素の働きを阻害することでがんを死滅させる経口薬です。プララトレキサートはがん細胞が必要とする葉酸を作らせないようにすることでがんを死滅させる葉酸代謝拮抗薬であり、ロミデプシンはやはり酵素の働きを阻害することでがんを死滅させる薬です。, いずれの薬も奏効割合は3割前後で、効果はそれほど高いわけではありません。しかし、これらの薬で寛解になるとかなり長期にわたり寛解を維持している患者さんが少なからずいます。この点は高齢者に多い病気であるだけに朗報といえるでしょう。, カフェで学ぼうがんのこと「子宮体がんと妊孕性(にんようせい)温存の可能性について」, リンパ節病変の進展による、限局性かつリンパ節病変と連続性のある節外臓器の病変を伴うI期またはII期, 横隔膜の両側にある複数のリンパ節病変、または脾臓病変を伴う横隔膜の上側の複数のリンパ節病変, 非特定末梢性T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、ALK陰性末梢性T細胞リンパ腫. 悪性リンパ腫の中でも、罹患率が高い病型や新たな治療法が登場してきた4種類の悪性リンパ腫の治療法を解説します。 悪性リンパ腫とは 悪性リンパ腫は、生体の免疫機能を担う白血球の一種であるリンパ球ががん化する病気です。 悪性リンパ腫 首をはじめとするリンパ節の多いところに、通常は痛みのないしこりとして現れます。 発熱や体重減少などを伴うことが多く、首だけではなく腋の下や足の付け根など体の他の部分にもしこりが生じることがあります。 リンパ系の組織や臓器は全身にあるため、悪性リンパ腫は全身の部位で発生する可能性があります。 症状 首やわきの下、足の付け根などリンパ節の多いところに、通常は痛みのないしこりとしてあらわれ、数週から数カ月かけ持続的に増大して縮小しません。 時代を象徴する大スターだった高倉健さんの死は、間違いなく今年のビッグニュースで、作品がテレビで続々、放映されています。2012年公開の映画『あなたへ』が遺作となってしまいましたが、この中で田中裕子さん扮する奥さんの死因が、奇しくも健さんと同じ悪性リンパ腫でした。 時代を象徴する大スターだった高倉健さんの死は、間違いなく今年のビッグニュースで、作品がテレビで続々、放映されています。2012年公開の映画『あなたへ』が遺作となってしまいましたが、この中で田中裕子さん扮する奥さんの死因が、奇しくも健さんと同じ悪性リンパ腫でした。治りにくいうえに、近年、増加傾向にあると言われるこの病、中津病院血液内科部長の太田健介先生に解説していただきます。, 私たちの体内には、病原体から身体を守る免疫システムがあり、白血球の仲間であるリンパ球は、体内に侵入してきた病原菌やウイルスを排除する重要な役割を担っています。悪性リンパ腫は、リンパ球ががん化して異常に増える病気です。, 「悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の大きく2つに分けられます。日本人では大半が非ホジキンリンパ腫で、さらにB細胞リンパ腫とT/NK細胞リンパ腫に分類されます。悪性リンパ腫の原因はほとんど解明されていませんが、一部はEBウイルスや、ピロリ菌などの感染との関連が明らかになっています」と太田先生。, 悪性リンパ腫の発症初期には首やわきの下、足の付け根にあるリンパ節にしこりがよくみられます。やわらかくて、丸みのある、グリグリとした塊で、徐々に大きくなっていきますが、痛みはほとんどありません。直径が1センチを超えるぐらいの大きさになると、皮膚の上からでも触れると分かります。