なんとなく靴作りを始めてみた、いち素人です。この連載では、履ける靴を仕上げるまでをお伝えしています。手作りの靴はなぜ高いのかが少しわかっていただけるかと思います!今回はいよいよ「本底」を縫い付ける「出し縫い」という作業に入ります。, 今回の作業は前回に引き続き、「底付け」になります。前回は「ウェルトをつける、中物を詰める、本底(アウトソール)を貼り付ける」という作業でした。今回は貼り付けた本底をしっかりと縫い付ける、ウェルト(細革)と靴底(本底)を接合する作業になります。市販の靴には本底を貼り付けてあるだけの<圧着式>と呼ばれる取り付け方法もあります。貼り付けてあるだけ、といっても超強力接着剤で貼られているのでそう簡単にははがれません。ですが、コバに縫い目があるのとないのとではやはり高級感が違います。そしてタイトルでわざわざ〝手縫いで〟と記したのは、出し縫いは専用のミシンで行われる場合もあるからです。今回はハンドソーンウェルテッド製法で進めていますが、出し縫いをミシン縫いした場合、出し縫い以外の工程、全工程の90%が手作業になることから「ハンドソーンウェルテッド製法九分仕立て」と呼ばれます。ミシンを使うと手縫いで数時間掛かる作業が両足5分もかからず終了します(泣)。機械で仕上げても強度などは変わらないようですが、それでも手縫いで仕上げられた靴を求める人は少なくありません。ピッチの細かさ&繊細さ、ひと縫いずつしっかりと締め上げられることで出る風合い、といったところに惹かれるのかもしれません。, 前置きが長くなりましたが(毎度ですね)、出し縫い作業をする前に輪郭(コバ)を整えておきます。この後、出し縫い作業に必要な「ドブ」を作るために、コバを仕上がり時と同じフォルムにしておく必要があるからです。ギリギリまで最終ラインに近い状態にしておく方が後がラクです。包丁でアッパーのラインをガイドにしてコバを削っていきます。ちまちまやっていると時間ばかり掛かるので、決めたラインを一気に削っていきたいところですが、削りすぎると取り返しが付かなくなるので…結局ちまちまと。5~7mmくらいにするのが目標です。ペンでラインを引いてしまえば確実なんですけどね。, 削り方のダメな例と良い例。包丁の刃を自分に向けていては危ないのです。でも細かな調整をするときはつい自分に向けて作業してしまいます…。, なんのこっちゃー!という用語の1、2を争う「ドブ起こし」。本底に出し縫いのための溝を作るため、本底に切れ目を入れて端の革を起こす作業です。出し縫いをした後で起こした部分を伏せると縫い目が見えなくなります。これを「伏せ縫い」と言います。縫い目が直接地面に接しないので糸が擦れたり、糸をつたって水が入ってきたりを防ぐことができます。またドブ起こしには「縦ドブ」と「横ドブ」の2種類があります。縦ドブは縁から2mmくらいのところから溝を掘る位置に対して包丁をやや立てて切り込みを入れていきます。出し縫いが終わった後、伏せる際に包丁を入れたラインが出ます。一方横ドブは本底の真横から包丁を入れていきます。0.5~1mmの厚さで、溝にするところまで刃を入れていきます。横ドブはきれいに伏せられるというメリットがありますが、しっかり接着されていないとコバにすき間ができてしまう場合もあります。, 見本が汚くて申し訳ありませんが…左が横ドブで伏せた靴、右が縦ドブで伏せた靴です。縦ドブだと伏せたラインが目立ちますが、本底に滑り止め用のソールなどを貼ってしまう場合は気になりません。縦ドブの方がコバの断面がきれいなまま進められるというメリットもあります。, 今回は縦ドブで加工します。まずはどこに溝を作るかガイド線を引きます。引き終えたら包丁でガイド線に向かって切り込みを入れます。包丁の入れすぎに注意です…って言ったそばから深掘りしましたー(泣)。, 切り込みをいれたらまずはマイナスドライバーで起こします。…とすくい縫いが見えてしまっています…。もう取り返しがつきません。すくい縫いの糸まで切らなくてよかった、と自分をなぐさめます。, ------------やり直しました…--------------- 縦ドブをやめて横ドブで再開しました。ぐるりと3/4周したら(今回はかかとまでは縫いません)切り込みをいれたところを水をつけたブラシで濡らします。革が柔らかくなったらハンマーでしっかり起こします。起こしたギリギリの位置に溝を作るためです。しっかり起こしたら<ガリ>と呼ばれる道具で溝を作っていきます。一定方向に削って溝を作ります。溝の深さは、浅過ぎても深過ぎてもダメで、糸の太さよりも少し浅いくらいの深さを目指します。, 真ん中の道具が<ガリ>。これは折ってしまった<すくい>を加工して作ったものです。リサイクルで新しい道具を作る。靴あるあるです。一番下が<出し針>です。, 出し縫いには、前述の<出し針>という穴を開けるための道具と、縫うための糸の先端に付ける<毛針(イノシシの毛)>が必要です。イノシシ?なんてびっくりしてしまいますが、出し縫いの場合、針となる部分がしなやかに曲げられることが重要なのです。曲げられるけどコシがある。その条件にぴったりなのがイノシシの毛なんだそう。毛先に糸を絡ませ、毛根を先端にします。, これがイノシシの毛。チャン(松ヤニを加工したもの)をつけて糸を絡ませて使います。イノシシの毛は現在では入手が難しく、釣り道具を活用している人もいるようです。前回出てきた「すくい針」も使えるように見えますが、土踏まずのあたりで針が通らなくなるので残念ながら活用できません。, 出し針で穴をあけ、両側から糸を入れて締め上げます。縫いのピッチは好みですが、細かい方が高級感が出ます。ピッチのガイドを入れると確実ですが、ピッチはまぁまぁ揃うので、このまま進めていきます。ウェルトの最後まで縫いきったら終了!, 出し針で穴をあけ、両側から糸をいれて締め上げていきます。穴をあけて糸を通して…の繰り返しです。ピッチはこのような感じになっています。, 最後に起こしたドブを伏せていきます。まず、ブラシで縫い目と起こした革の裏革に接着剤(スリーダイン)を塗る、というかすりこむようにしてつけます。少し乾かしてからハンマーで叩いて伏せる&接着をしていきます。縫い目がぽっこり出ないようにしっかり叩いて、今度こそ終了です!, 縫い目にスリーダインを塗って、本底全体を濡らしてからハンマーで叩いて伏せていきます。, 会社員からフリーのエディターになって3年。雑誌、Webで企画や編集の仕事を行っている。退職をきっかけに社会人1年目からの目標だった“手に職を付ける”ため、編集業と並行して手作り靴の修行中。, 今回の取材中に、連載監督・Hさんから何度も「底がかなりぷっくりしてますよね?」とツッコミを受けました。その度に「履いていくうちに潰れてくるんでしばらくしたらいい感じになると思います」と返すんですが、その後も写真を撮るたびに「いやー結構入ってますよね」と追い打ち…。なんで降参します。入れすぎました(笑)。作業途中ドブ起こしで不具合ありで、本底をはがさなければならかったのでコルクも詰め直しました。今度はいい感じ!のはずです。, 女性のライフスタイルを広げて深める「革靴」のススメ 第6回 「革」の特徴を知ることが、「靴」の特徴を知ることにも繋がる, 女性のライフスタイルを広げて深める「革靴」のススメ 第3回 デザインをより深く理解するための革靴ディテール用語, 靴作りドキュメント第七回 ここまでくれば見た目はもう靴!足裏を受け止める底付けに着手。, バーバリーが生みの親?服地「ギャバジン」の特徴と誕生秘話、チノクロスとの違いを探る, 靴磨き職人「シューシャイナーKENさん」が語る、自宅のシューズボックスを眺める楽しさ。, TUDOR RANGER Ⅱ(チュードル レンジャー2)。色褪せないスペースデザインをまとう. なんとなく靴作りを始めてみた、いち素人です。この連載では、履ける靴を一足仕上げるまでをドキュメントスタイルでお伝えしていきます。靴制作の過程を見てもらう中で、靴マニアじゃなくても「なぜ、いい靴はこんなにも高いのか?」の疑問、さらには靴を愛したくなるヒミツがわかってもらえるのではないかと思います。靴の裏側(というと大げさですが)がわかると、靴を見るのが楽しくなる!(購入に至るか否かはまた別の話…) まずは、僭越ながら、私の自己紹介と靴作りの魅力をお伝えします。, なぜ、靴を作ろうと思ったのか…。今でもなんでだったんだろうなぁとはっきりしないのですが、始めたのは突然で、しかも特別靴が好きだったわけでもありません(おしゃれは好きです)。革靴にいたっては持っていたのはラクに履けるスリッポン型だけ。そもそも最初は革カバンを作ってみたくて、工房などで開催されている「手作り教室」みたいなところを探していました。が、どこも作業時間が短いんですね。“1回2時間”(週2回だけど)、なんて何ができるんだろうとブツブツ言いながらながらネットでとにかく探しまくり…。たどり着いたのが靴の専門学校でした。学校がお休みの土曜日に一般の人に教えてくれるという講座で、時間は朝の10時から夕方4時までみっちり6時間。受講条件は道具を購入して揃えられること。授業料は半年で11万、道具代は1万8000円くらいだったので、趣味というにはそこそこハードルが高いお値段でしたが、迷わず申し込みました。そしてすでに目的がカバンじゃなくなってましたが、なんだかおもしろそうだという予感はあったんです。, 左が外羽根(羽根=紐を通す部分が外側からつけられているもの)、そのあとに右の内羽根(羽根が内側からつけられているもの)を作りました。まずは、基本のスタイルからでした。, 初めて工房で道具を見たとき、ズラリと並んだ工具にテンションがあがりました。道具入れも好みのモノ(ですが、いかんせん中の整理整頓がまるでダメ…)。似たような道具もありますが別物です。柄のあるものは柄を自分でつけて、研ぎ石でひたすら刃を研ぎます。包丁は使えるようになるまでに4時間ほどかかりました。包丁の切れ味は革の切り口に差が出るので今でも作業前に包丁を研ぎます。ちなみに刃物系の道具は自分で刃を作る必要があるものが多く、いろんな形の鋼素材を研いで研いで研ぎまくって作ります(たまに火であぶって曲げたりします)。砥石とヤスリ、ライターは友達です(笑)。靴そのものを作るのもおもしろいのですが、道具を作ったり手入れをしたりカスタムしてみたりがまた楽しいんです。靴に限って言えば、いい職人は道具作りの腕も整理整頓も一流です。少なくとも私が出会ったすばらしい靴を作る職人さんはみなそうでした。道具の手入れ、整頓がきちんとしている工房の職人さんは信用できると思います。また同じ道具でも使いやすいようにそれぞれアレンジが加えられていて微妙に違ったりするので、比べてみるとおもしろいですよ。各道具の詳細は、また次回以降で触れていきたいと思います。, 靴を作るにあたって必要なものは、先に触れた道具類、革、そして木型です。木型といっても今はほとんどが樹脂製で、見た目にはわかりませんが、中身がギュッと詰まっているのでかなり重いです。自分だけの一足を作るならひと組あれば十分ですが、同じデザインでもサイズを変えて作りたいとなると別の型が必要になります。靴を作ることを生業としている人たちの場合、それはそれは膨大な数の木型が必要になります。オーダーメイドの場合、まず求めている靴の形に似た木型をチョイスし(もちろんゼロから作る場合もあります)、そこからその人に合わせて削ったり盛ったりして微調整していくのです。そして、靴はデザインにもよりますが、本当にたくさんのパーツからできています。平面で見ているとなんだこれ?と思う形のモノばかりですが、全パーツを縫い合わせて木型に合わせてみると、ピタッ!とおもしろいようにはまるんですね。もちろん、そのためにはきちんと設計された型紙が必要なのですが…。その型紙の作り方もいろいろあって、ひとそれぞれ。デザインも含めるととても時間が掛かるし、他の人には教えたくない企業秘密の部分です。作り方でもっともスタンダードなのが、木型に紙を貼って靴の仕上がり線を描き、その紙を平面に落とし込んで各パーツを作る方法。なので正確には立体→平面→立体という作業になります。それも、今後の連載でもっと詳しく紹介します。, 樹脂製の木型。そのままでも使えますが、デザインや足の形にあわせて木型を削ったり革を張ったりして形作ります。底の革は中底になります。, 型紙を革に写して、包丁で裁断していきます。線の外側を裁断するのか内側を裁断するのかでサイズが変わってしまいます。1ミリでもずれると他のパーツと合わなくなるので、正確(性格も出る)性が問われる作業です。, 靴作りの作業は、ざっくりですが、足を包み込んでいるアッパー部分と足裏の底部分に分かれます。凝っているのが目で見てすぐわかるので、装飾が華美だったりパーツが多かったりする靴が高そうだなと思ってしまいがちですが、底部分のグレードも価格を大きく左右します。靴の底部分は中底(足裏が当たる部分)、本底(地面が当たる部分)、ウェルト(靴を囲んでいる縁)、かかとで構成されていて、さらに中底と本底の間には中モノ、シャンクと呼ばれる素材が入って(いたりいなかったり)います。いいところなのか悪いところなのかはさておき、靴は手が掛かっているところほど見えにくいという特徴があります。ある靴の専門誌では、何十万もする有名な革靴をバラバラにして、中身を解説していたりします。バラバラにしてしまうと元には戻せないので、普通だったらそんなことできません。まぁなんと大胆なことをという感じです。でもそうしないと中底と本底の合体が手縫いなのか接着剤でくっつけただけなのか、そして先に触れた中モノのグレードや有無がわからないんですね。当然手縫いのものは値段が高くなるし、中モノの素材や量でも値段が変わってきます。アッパーがシンプルでも、靴底にとんでもない手間が掛かっていたりするとやはり高いわけです。(使われている革そのものが上質だからという理由もありますが)と、見えないところに手が掛かっている靴(一般的に高い靴)は履き心地がやっぱり違うんです。思い起こせば数年前、会社員時代の上司が、ことあるごとに脚を組み、靴をながめながらハンカチでつま先を磨いて(愛でて)いたっけ…。実際に作ってみるとそうしたくなる気持ちも理解ができるようになるんですね(やらないけど)。, 中底の革を付けた状態です。アッパーと中底を合体させるため、縫うための溝を作った状態です。実際にどのように合体させていくのかは、連載で紹介していきます, 靴のガイドライン部分は基本的に折り込みという作業を行います。革の端を薄くすいて折り返す作業です(切りっぱなしのデザインもあります)。飾りもパーツ同士をくっつける前に行います。穴が空いたところの色が何色に見えるかもデザインによります。色を変えたデザインもあったりします。, 最初に通った講座は1足が完成後、学校の都合で講座がなくなってしまったので、また新たに工房探し。最初同様、1日の作業時間が多いところを探しました。私の場合、自分だけの一足を作りたい!のではなく、靴の作り方を知りたかったので、続けて長い時間作業できる方がよかったのです。新しい工房に移って今までに私が作った靴は約3年で13足。第一号は外羽根、次いで内羽根、ストラップ、チャッカーブーツ(くるぶし丈で2~3組の紐穴を持つ革靴)、同じく子ども用、ショートブーツ、同じく子ども用、パンプス、ワンストラップパンプス、縫い割りモカ、フラットシューズ、ワンストラップシューズ、ワンストラップシューズ改良版、内羽根のブーツ、スリッポン。見直してみたことがなかったので、結構な数あってビックリしました。靴の形で覚えておきたいのが紐付きの左のふたつ。ちなみに木型は一緒です。一番左は外羽根(ブラッチャー)で羽根と呼ばれるパーツの靴紐を通す始まりの部分が、靴紐の下にある甲部分の革の外側に縫われているタイプ。左からふたつ目が内羽根(バルモラル)で、羽根が甲部分の革の下にもぐりこんでいます。内羽根の方がスマートで華奢な印象です。どちらも基本形で、ビジネスシューズには必ずあるデザイン。これを知るだけでも電車の中でビジネスマンの靴を見るのが楽しくなります。気にして見るようになると、底の付け方が手縫いなのか接着なのか、ひいては高いのか安いのかもわかるようになるんです。, 左はショートブーツと普通のシューズの中間くらいの長さが欲しくて設計した一足。右はストラップが甲の部分にくるようにすることにこだわりました。底付けはどちらもノルベジェーゼという製法です。, 左はチャッカーブーツ。底付けはノルウィージャンという製法です。右はショートブーツ、内羽根にすることにすごくこだわったので、アッパーの縫製に手こずりました。底付けはノルベジェーゼという製法です。, そして、作り出して気がついたことは、私は「靴が好きなのではなく作ることが好き」だということ。だから作っても作っても満足はなく、あれもこれもやってみたいと思うのですが、そのペースに作業スピードが追いつかない。さらに作りたい靴、具体的なデザイン案がないので、できるだけアッパーに手が掛からない(パーツが少ない)デザインで作っていました。でもパーツが少ない靴ほど型紙を作るのが難しいことがわかったりと新たな問題も見えてきて、作業がストップしてしまう時期がありました。そんな時に自分が作った靴を改めて見直してみたら、1足目、2足目の靴の出来がいいことに気がつき、クラシカルなデザインは時を経ても美しいし、基本って大事だなと実感した次第です…。あれやこれやと書きましたが、素人でも履ける靴は作れるんです!そして私はこれまでの反省も込めて、今年はクラシックなデザインのウィングチップシューズに挑戦してみようと思います。作業工程も含め次の作業は次回に続きます。, 先輩が作ったダブルソールのウィングチップシューズ!美しい!!このくらいの完成度を目指したいところです。, 会社員からフリーのエディターになって3年。雑誌、Webで企画や編集の仕事を行っている。退職をきっかけに社会人1年目からの目標だった“手に職を付ける”ため、編集業と並行して手作り靴の修行中。, 今回の企画で、今までどれだけ自分の作ったものを見返していなかったのかということが明らかになりました。見直しって大事ですね…。靴好きの人に向けてというよりは、「自分では作らないけど、制作の過程を見てみたい」という人にぜひ読んでもらいたいページです。私は、いわゆる“靴マニア”でもないのですが、だからこそ、いいことも悪いことも書けるかなと思っています。また、世の中に出ている製品はピンキリなので、非力ながら「靴の価値」みたいなものもお伝えできたらと思っています。, レディス革靴・座談会。プロ目線から、革靴の魅力と選び方、おすすめの一足を聞く 連載「革靴のススメ」番外編・前編, 今日の靴が“失ったもの”にもう一度光を当てる。BRASSのオリジナルブランド「CLINCH」, お宝探しのレコード屋通いがやめられなくて。思春期からずっと側にあるアナログレコードの魅力とは。, 靴磨き職人「シューシャイナーKENさん」が語る、自宅のシューズボックスを眺める楽しさ。, こんなパーツいるのかな?と思うことも。平面から立体を作っていくプロセスがおもしろい, 後々まで愛されるのは丁寧な仕事によって仕上がった一品。基本に戻って新たな1足を作りたい. 靴職人見習い時代|すくい縫い(手縫い)編 ... なので、1回巻いて締めるすくい縫いのやり方に変更しました。 とは言うものの、すぐに1回巻きで締めれるわけもなく現在も100%ではなく9割程度で、ごくたまに2回巻くこともあります。 現在のすくい縫い. 着用した状態で裾上げ分を折り返し、他の人に待ち針を打ってもらいます(靴をはくので少し長めに)。 かかとまたは足の側面の1カ所で長さをはかり、その長さを全体の裾上げ幅とします。 でもそうしないと中底と本底の合体が手縫いなのか接着剤でくっつけただけなのか、そして先に触れた中モノのグレードや有無がわからないんですね。 当然手縫いのものは値段が高くなるし、中モノの素材や量でも値段が変わってきます。アッパーがシンプルでも、靴底にとんでもない手間が� なんとなく靴作りを始めてみた、いち素人です。この連載では、履ける靴を一足仕上げるまでをドキュメントスタイルでお伝えしています。靴作りも終盤に差し掛かり、今回はいよいよ「本底」を縫い付ける<出し縫い>という作業に入ります。 先日、チャン糸のページで「すくい縫い」を「素手」ですることに少し触れたところ、「指切らないの?」とご質問いただいたので私の靴職人見習い時代のことをちょこっと書いてみようと思います。, 実は、このことに関しては以前からちょくちょくご質問いただいてたのですが、結論から言うと現在は切りませんが靴職人見習い時代は普通に切ってました(笑), 靴職人見習い時代の前に、なぜ手袋や指サックを付けてすくい縫いをするのか説明させていただきます。, なお、ここで言うすくい縫いとは、中底(又はリブテープ)、アッパー、ウェルトの3つを重ねて縫い付ける際のすくい縫いになります。, リブテープがない製法の靴は中底を縫います。|※その後ウェルトにアウトソール(本底)を縫い付けるのでウェルトはアッパーとアウトソールに挟まれます。, すくい縫いをするウェルトは、アッパーとアウトソールの間に位置しており、歩行時には上下両方向から引っぱられる負荷がかかります。故に、縫い付けがあまいと糸が緩んできて靴底が浮いてきてしまいます。, そのため、ウェルトを縫うときは縫うだけでなく「締め付ける」作業を加えます。この「締め付ける」際に力を入れてチャン糸を引っ張るので、摩擦で指を切らないよう指サックや手袋をつけて手を保護するのです。, そもそもチャン糸を素手ですくい縫いするなんておかしな話です。なのになぜ私が素手ですくい縫いをすることになったのかと言いますと、先代が素手ですくい縫いをしてたからです。, 当時の私はまだ無知だったので、すくい縫いは素手で縫うものと勘違いして毎日チャン糸を力よく引っ張っていました。当然、摩擦で指が擦り切れて血だらけになったことは言うまでもありません(笑), きっと何回も切ってるうちに皮が分厚くなって切らなくなるんだろうと思ってたのですが、後に手袋や指サックを付けてすくい縫いをすることを知ったときはショックでしたね(笑), 力を入れて締め付けるすくい縫いは結構疲れる作業なんですが、練習を繰り返していくうちに疲れなくなります。ここがターニングポイントでこの頃には指も切らなくなりました。, 皮が分厚くなったこともありますが、力でなく技術で締め付けれるようになったからです。なんと言うか、「ギュウゥー」って締めるんではなくタイミングで「ギュッ」って締める感じです(笑), 結果、指も切らなくなり、また、力で締め付けていた時よりも均一に締め付けれるようになりました。, その後、指サックや手袋を付けてすくい縫いをすることも経験しましたが、糸の微妙な感覚が手に伝わってこなくなってしまうので、結局素手に戻りました。, 先代がご隠居された後は、関さんのもとで靴職人の技術を学びました。この期間にすくい縫いで使う針と巻く回数を変更しました。, と、ちょっとここで先に、すくい縫いで使う針についてご紹介しときます。すくい縫いでは「すくい針」と「金針」の2種類の針を使います。, すくい針|糸を通す前にリブテープ(又は中底)とアッパーにもともと開いてる穴を拾ってウェルトに穴を開けるすくい縫い専用の針です。, ウェルトを縫う針は、先代が毛針(イノシシの毛)を使っていたので私も毛針を使ってすくい縫いをしていたのですが金針に変更しました。, これは、毛針には毛針の良さもあるのですが、毛針よりも硬い金針の方が針の通りが良く断然にすくい縫いのスピードが上がったからです。, 最初に毛針を使ってたからなのか?金針を使ったときにはその針の通りやすさに感動しました(笑), 毛針(イノシシの毛)|猪の毛?と思うかもしれませんが猪の毛です。猪の毛は柔らかくどんな穴にも対応できます。, 金針|金針は毛針(イノシシの毛)と違って硬いので自由自在に曲がらないため、あらかじめすくい針と同じ角度のアーチを描くように靴職人が自分で形を作ります。, 通常すくい縫いでは、締め付けるときの動作で糸がずれないよう「すくい針」などに糸を数回巻きつけ固定してから締め付けるのですが、全盛期時代の関さんは1回しか巻かずに締め付けてたそうです。, 締め付けるときは、糸がずれないよう「すくい針の柄の溝」に糸を巻きつけ固定して締め付けます。※靴職人さんによってすくい針以外のものに巻き付ける方もいらっしゃいます。, 当時の私は4回ほど巻いてたので一縫いごとに3回分の時間ロスです。一足で100縫いほどすると300回巻く回数が多くなってしまいます。なので、1回巻いて締めるすくい縫いのやり方に変更しました。, とは言うものの、すぐに1回巻きで締めれるわけもなく現在も100%ではなく9割程度で、ごくたまに2回巻くこともあります。, 以上のような経緯を経て、現在は「素手」で「金針」で「1回巻き」ですくい縫いをすることにいたりました。, また時が経てば違う種類の針を使ってたりなど、違うすくい縫いのやり方に変わってるかもしれません。, すくい縫いに限らず全てにおいて日々精進です!(笑)。きっと「完璧」と思える日はこないと思います。, すくい縫いをしてるときの動画があったみたいです。以前カメラマン(写真)の方が撮影に来られたときに動画を作ってユーチューブに上げてくれてたそうです。, よく見ると、靴底を剥がしてる靴はマッケイ製法の靴で、すくい縫いをしてる靴はグッドイヤーウェルテッド製法の靴ですねw, その一つとして当サイトではお問い合わせいただいた内容をブログとして発信させていただいてます。.