英語版はこちら. をご覧ください。. Copyright (C) 2020 ビジョンを実現するキャッシュフロー経営 All Rights Reserved. 2019年4月、「金融検査マニュアル」が廃止される予定とのことです。金融検査マニュアル廃止によって何が変化するのでしょうか。これまでの経緯とともにわかりやすく解説します。, まず、「金融検査マニュアル」とは何でしょうか。「金融検査マニュアル」とは、金融庁の検査官が金融機関を検査する際の手引書です。, 金融機関の監督官庁である金融庁は、各金融機関に対して、定期的に検査を実施しています。その検査の指針として、使われてきたのが「金融検査マニュアル」です。1999年(平成11年)7月に作成、公表されました。, その背景には、バブル崩壊に伴う不良債権の増大によって、金融機関の経営が悪化したという経緯があります。, バブル経済の崩壊によって、金融機関が資金供給していた企業の経営が悪化し、借りていたお金を返せない企業が多くなったため、金融機関の経営も悪化したのです。, 金融機関が経営破綻すると、その金融機関が資金供給していた企業が、資金に行き詰まり、連鎖倒産するようなことも起こります。, 「金融検査マニュアル」は、各金融機関がリスクを考慮した経営を行うことで、経営の健全化を図るべきだという考え方を元に作成されています。, そのリスク考慮の具体策の1つが融資先の債務者区分です。債務者区分とは、返済能力による、融資先の企業の格付けです。, 具体的には、正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の5つの区分があります。(要注意先の中に、要管理先という小区分もあります)。, 融資先企業の債務者区分がよくない場合、貸したお金が回収できないリスク、つまり貸し倒れのリスクがあると判断されます。, そこで、「金融検査マニュアル」では、金融機関の経営健全化のために、融資先企業の債務者区分に応じて、貸倒引当金を計上することを求めています。会計上、この貸倒引当金はコストです。, つまり、財務状況が悪い企業や、資金繰りがよくない企業、また、収益力が低い企業への貸し出しは、金融機関にとってコスト高になるということです。, このため、「金融検査マニュアル」の浸透に伴って、財務状況などがよくない企業に対する貸し渋り、貸しはがしが行われるようになりました。, 貸し渋り、貸しはがしの横行によって次第に、貸し渋り、貸しはがしによる中小企業の経営への悪影響が問題視されるようになりました。, その背景には、財務状況はよくなくとも、成長可能性のある企業や、事業に特色のある企業に対して、必要な資金供給が行われるべきだという考え方があります。, なぜなら、成長可能性のある企業や、事業に特色のある企業が必要な資金調達ができないために、事業継続や事業推進に制約を受けるとなると、地域経済や雇用の面でもマイナスだからです。, 事業性評価融資とは、財務状況や担保・保証の有無だけによって判断するのではなく、事業内容や成長可能性も評価して行う融資のことです。, その「日本産業再興プラン」の具体策の一つとして、「地域金融機関等による事業性を評価する融資の促進等」が盛り込まれました。, 国として、事業性を評価した融資が行われるように促進していくという金融行政の大転換です, 地域金融機関が地域の企業を資金的に支援することで、事業継続や成長促進を図ることが、日本経済全体の活性化につながると国が判断したということです。, これを受けて、2014年(平成26年)9月11日公表の金融庁の方針(「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」)にも、「事業性評価に基づく融資等」が盛り込まれました。, 「金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる。」, 金融庁「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」2014年(平成26年)9月11日, こうして、金融機関を監督する金融庁の方針は、1999年の「金融検査マニュアル」公表時からは大きく変更されました。, 2015年(平成27年)9月18日公表の「平成27事務年度 金融行政方針について」概要には、金融行政の目的として、以下のように書かれています。, 「Ⅰ.金融行政の目的 -金融行政の目指すもの金融行政を取り巻く環境が急激に変化する中においても、, ① 質の高い金融仲介機能(直接金融・間接金融)が景気のサイクルに大きく左右されることなく発揮されること、
社員に自分の考えが伝わっていないと感じたり、社長と社員の間に危機感のズレがあると感じることはありませんか?, https://www.fsa.go.jp/common/law/manualLink.html, 次の記事「「ものづくり補助金」の採択率は?採択に必要な3つの力とは?得られる真のメリットとは?」, 財務三表(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書)とは?個人の場合でわかりやすく解説, 理念とは何か。理念が浸透しないのはなぜか。理念を「社員が自律的に動くしくみ」とするには?, キャッシュフロー経営の成果とは?会社のお金の流れを見える化して経営判断に役立てる方法, キャッシュ・コンバージョン・サイクルとは?キャッシュフロー経営の代表的な指標をわかりやすく解説, 「お金のブロックパズル」を自社の経営数字で作る方法は?根拠ある売上目標を立てるには?, 歯科医院の平均の売上・利益は?歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士の平均収入は?わかりやすく解説. この「考え方と進め方」では、2018年度終了後(2019年4月1日以降)を目処に、検査マニュアル並びに別表の廃止が示された。そこで、本稿では、検査マニュアル並びに別表の廃止に係る背景を踏まえて、実務上でどういった影響が生じるのかを考察する。なお、本稿における意見はすべて執筆者の私見であり、所属する法人の公式見解ではないことをご容赦願いたい。, 金融庁のHP:「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)(案)に関する対話について」(平成30年3月27日), 有限責任監査法人トーマツ ディレクター。金融当局において、銀行・保険会社等の検査・監督業務に長年にわたって幅広く従事。2016年6月金融庁検査局検査監理官を最後に退職。同年9月から現職。金融庁在職中はメガバンク、大手保険会社、地域銀行等への数多くの金融検査・モニタリングにおいて主任検査官を務めた経験を有す。現在、大手行や保険会社等に金融行政の動向に対応したガバナンスやコンプライアンス態勢等について... さらに見る, © 2020. まず、「金融検査マニュアル」とは何でしょうか。「金融検査マニュアル」とは、金融庁の検査官が金融機関を検査する際の手引書です。 金融機関の監督官庁である金融庁は、各金融機関に対して、定期的に検査を実施しています。その検査の指針として、使われてきたのが「金融検査マニュアル」です。1999年(平成11年)7月に作成、公表されました。 その背景には、バブル崩壊に伴う不良債権の増大によって、金融機関の経営が悪化したという経緯があります。 バブル経済の崩壊によって、金融機関 … デロイト トーマツ グループでは変革の最前線からプロフェッショナルの視点を発信しています。, Readiness(予防)、 Response(対処)、Recovery(回復)の3ステージに分けて、それらを総合して考えることを提唱しています。, プライベートマーケット向けのサービスをワンストップで提供する統一プラットフォームです。, テクノロジー・メディア・通信業界に関して、注目すべきトピックの分析と将来予測をまとめています。, 全世界の小売企業から2018年度の売上高上位250社をランキングにまとめ分析しているほか、小売業における最新のトピックスをまとめています。, 最新の調査レポートやキャンペーン、セミナー情報、D-NNOVATION Perspectivesブログなど、厳選した情報を中心に発信しておりますので是非ご活用ください。, デロイト トーマツ グループの叡智を結集し、日本企業が新たな飛躍と繁栄の時代を切り拓くためのデジタル経営改革のエッセンスを凝縮した1冊。, 最先端テクノロジーとデザイン・シンキングの融合からなるイノベーション創発施設「Greenhouse」がオープンいたします。, 金融庁が公表した「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(案)によると、2018年度で検査マニュアルを廃止、廃止の対象に自己査定関連の「別表」も含むとしました。具体的にはどのような変化がもたらされるのでしょうか。, 金融庁は、2017年11月に、平成29事務年度・金融行政方針(以下「行政方針」)を公表し、「検査・監督のあり方の見直し」を言及した。これを受けて、同年12月に「金融検査・監督の考え方と進め方(以下「考え方と進め方」)」を公表し、「実質・未来・全体」に重点を置いた、新しい検査・監督の実現に向けて、パブリックコメントを実施した(期限:2018年2月14日)。