※FIPに関してはまだ解明されていないことが多く、様々な研究が行われている状況です。このページでは2010年3月現在で調べた内容を示してあります。新しい情報を入手次第更新していく予定ですので、ご了承ください。, コロナウイルスが突然変異したものがFIPウイルスですが、『コロナウイルスを持っている=確実にFIPを発症する』ということではありません。, コロナウイルス © 2008 NPO法人 東京キャットガーディアン, FCoVは排泄物からの感染が容易に成立するため、多くの猫間でこのウイルス感染が広がっていると思われます。, ※タンパク(糞便中の物質)によりウイルスが保護されている場合には、3~7週間は環境中で抵抗性を持つとされています。, ・感染猫の13%は生涯にわたるウイルスキャリアー猫(生涯ウイルス排泄。高い抗体価を維持). 猫カリシウイルス感染症は一本鎖RNAウイルスであるネコカリシウイルスによって引き起こされる病気。1950年代、ニュージーランドに暮らす猫の消化管から分離されたのが最初ですが(Fastier L., 1957)、実際はそれよりも遥か昔から存在していたものと推測されます。 グラフは感染実験後の発症、ウイルス分離、抗体の推移を示している。発症期はウイルスが多く、逆に抗体が存在していない。防御免疫(その一部が抗体)が出現しだすと、ウイルス量は急速に減少し、症状は回復する。重要なことは、症状回復後もウイルスを排出し続けることである。これを持続感染というが、FCV感染の場合は健康キャリアー、回復期キャリアーとなり、病気を引き起していない場合でもウイルスが検出されることがある。, 弱毒生ワクチンあるいは不活化ワクチンが市販されている。9週と12週目のワクチン接種と1年後の追加免疫、その後3年毎の追加接種が推奨される。リスクが高い場合は16週目のワクチン接種と毎年の追加接種を検討すべきである。また、FCV感染から回復した猫も生涯発症から免れるわけではないので、追加ワクチン接種は継続すべきである。近年は、多様な抗原性に対応すべく改良ワクチンも市販されている。しかし、全ての野外株に有効なワクチンがないのが現状である。, 感染猫から排出されたFCVは環境中で非常に耐性であり、約1ヵ月間感染性を保持している。消毒は慎重に行わなければならない。0.1%次亜塩素酸ナトリウムはFCVの消毒に有効である。, FCV治療薬としてネコのインターフェロン製剤(IFN-ω)が市販されており、1日1回の静注を3日間継続する。またネコ型モノクローナル抗体も市販されていた。加えて輸液などの対症療法と適切な飼育管理が重要である。食欲不振の猫には嗜好性が高く, 混合された、温かいえさを与える。ブロムヘキシンなどの去痰薬や生理食塩水との噴霧も有効である。二次感染予防のための広域スペクトラムの抗生物質も有効である。. 感染により、軽度な下痢などを示す。無症状なことも多い。, FIPウイルスは猫コロナウイルスですが、猫がFIPウイルスに感染して発病するのではなく、猫コロナウイルスに感染した一部の猫がFIPを発症するといわれています。(その理由はまだ完全には解明されていません), FCoVは排泄物からの感染が容易に成立するため、多くの猫間でこのウイルス感染が広がっていると思われます。また、野外生活を送るいわゆる野良猫も、まずこのウイルスを持っているとみなしたほうが良いでしょう。家庭内飼育猫であっても、かなりの確率で高い抗体価を持っています。, FCoVは通常は他の猫に感染しても重篤な病気を引き起こすものではなく、血液検査上の抗体価の上昇が認められるだけの場合がほとんどです。つまり、「高いFCoV抗体価=FIPではない」ということになります。, 病原性の低い(弱毒)FCoVは、糞便を介し、容易に口や鼻から他の猫へ感染していきます。感染は通常一過性で終結し、時間の経過と共に抗体価も下降していきます。, 病原性の低いFCoVに感染した一部の猫の体内で、このFCoVから突然変異でFIPVが発生するといわれています。(現時点では、FIP発症猫から他の猫へのFIPV感染の可能性は低いとされています), いまだ詳細は不明です。免疫抑制を起こすFIVやFeLVなどのウイルス感染や、生活上でのストレスが強く関与していると考えられます。, ※この場合の『ストレス』とは『猫にとってのストレス』です。これはあくまでも『猫が感じるもの』なので、何がストレスになるかは各猫によって違うため、限定して述べることは出来ません。, 発症には、強毒FIPVが体内で生まれること以外に、猫の免疫系の異常が起こることが条件であると、現時点では考えられています。, FCoVの発生を防ぐためには、まず飼育予定の猫がFCoV陰性であることを検査で確認して、陽性猫を飼育環境内に入れないことです。1匹でもFCoV陽性の猫がいたら、同居の猫にすみやかに感染が拡がるでしょう。, FCoVは猫の体外では不安定なウイルスで、室温では数分から数時間で感染性を失います。このウイルスはほとんどの消毒薬に対して感受性を持っており、環境中の消毒は一般的なアルコールや次亜塩素酸などの使用が有効です。, ※タンパク(糞便中の物質)によりウイルスが保護されている場合には、3~7週間は環境中で抵抗性を持つとされています。弱いウイルスだと油断せず、こまめな掃除と消毒をしっかりと行うことが肝要です。, 当サイトの文章・画像等を無断で転載することは法律で禁じられています。 猫カリシウイルス感染症の猫を抱いたり触ったりした場合、洋服にウイルスがついたかも。と心配なのですが、普通に家で洗濯したりクリーニングにだしたら、その服で他の猫を抱いたりしても大丈夫なのでしょうか?また手についた菌は石けん 白血病の猫の寿命、長生きさせるための方法についてまとめました。白血病というと、致死率の高い非常に怖い病気というイメージが強いのではないでしょうか。確かに猫の白血病ウイルス感染症は難治性の高い病気ではありますが、寿命はどのくらいになるのでしょうか。白血病の猫の寿命や長生きさせるための方法、感染と発症についてをご紹介します。, 山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。, 猫白血病ウイルス感染症(FeLV)を患っている場合でも、寿命を全うできる可能性があります。猫白血病ウイルス感染症とは、白血病ウイルスに感染することによって引き起こされます。, と言っても、このウイルスに「感染」したからと言って必ず「発症」するわけではありません。咬み傷などから白血病ウイルスが感染した場合、6週齢以下の子猫では80%以上が持続感染状態になりますが、1歳以上の場合は15%の猫だけが持続感染状態となったという報告があります。感染する年齢によって持続感染が起こるかどうかは変わります。, また、持続感染となった場合、つまり「白血病キャリア」であっても発症しないまま寿命を全うすることもあり、発症したとしても症状が落ち着いていれば、対症治療によって延命することも十分に可能と言えます。, 猫白血病ウイルス感染症は、難治性の病気であることには間違いありません。ただ、早期発見と適切な治療でウイルスの活動を抑えたり、発症させないようにコントロールすることもできる病気です。, 愛猫が猫白血病ウイルスに感染してしまったからと言って、すぐに亡くなってしまうとは限りません。まず獣医師の話をしっかり聞きましょう。, 上記では、猫が猫白血病ウイルスに「感染」したとしても「発症」しなければ、寿命を全うできる可能性があるとお話しました。では猫白血病ウイルス感染症を「発症」してしまった場合の寿命は、どのくらいになるのでしょうか。, 猫白血病ウイルスに感染した猫のうち、約30%の猫が猫白血病ウイルス感染症を発症するとされています。猫白血病ウイルス感染症を発症した時の猫の寿命は、約2年~5年とされていますが、病気の進行具合やその他の症状によって異なる場合もあり、一概には言えません。, また、猫白血病ウイルス感染症を発症した場合の致死率は、年齢によって大きく異なることが分かっています。, 生まれたての子猫が発症した場合の致死率はほぼ100%とされているのに対して、離乳期になると50%、成猫期になると10%とされています。猫白血病ウイルス感染症を一度発症してしまうと完治はなかなか難しく、根気よく治療を行っていくことが重要になります。, 猫が猫白血病ウイルス感染症を発症した場合、特効薬は存在しません。そのため、猫白血病ウイルス感染症の発症による免疫力の低下が引き起こす様々な症状や疾患に対する対症治療が主となり、輸液などが行われます。, また、猫の白血病ウイルス感染症の治療には、猫のカリシウイルス感染症の治療薬である猫用インターフェロン「インターキャット○R」が抗ウイルス剤として用いられます。インターフェロンとは、ウイルスや腫瘍細胞の増殖を抑制する効果が期待できる薬剤です。, 「インターキャット」は、本来カリシウイルス感染症の治療薬であるため、効能外使用とはなりますが、日本国内で認可されている薬剤の中で、現時点で猫白血病ウイルスに効果がある薬剤は他にないため、ごく一般的に使用されます。, 感染初期にインターフェロンを投与することによって、ウイルス感染を陰転させることができる場合もあります。(※陰転:感染が認められる場合を陽性と言い、認められない場合を陰性と言います。陽性であったものが、再検査の結果陰性になることを陰転と言います)
感染から回復した猫や不顕性感染の猫も長期間ウイルスを排出する。 回復した猫のほとんどが30日間以上ウイルスを排出し続け、数年にわたりウイルスを排出し続ける場合もある。 「猫白血病ウイルス(FeLV)感染症」という病気が存在します。血液細胞に異常が生じるウイルス性の感染症で、ネコ科動物特有の病気です。, 「白血病」と聞くととても重篤な症状が出る病気のイメージがありますが、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症とはどのような疾患でしょうか。, この記事では、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症とは何か、症状や検査方法、治療法、予防策などをまとめました。, 猫白血病ウイルス(FeLV)感染症とは、どのような病気なのでしょうか。まずはじめにそのメカニズムを紹介します。, 酸素や二酸化酸素を運ぶ「赤血球」や身体を異物から守ってくれる「白血球」は、猫が生きる上で必要不可欠な血液細胞です。, 血液細胞は骨の中にある「骨髄」で生成されます。その骨髄には血液細胞の元となる細胞(造血幹細胞)があります。, 血液細胞の数を増やしたい場合は、骨髄が造血幹細胞に働きかけることにより白血球や赤血球の生成を増やします。, 骨髄は、日々身体が必要とする血液細胞を適正数製造しています。しかし猫白血病ウイルス(FeLV)に感染すると、骨髄の働きに狂いが生じて血液細胞の製造が止まってしまったり、逆に過剰に製造したりします。, 多くの場合は製造が止まり、赤血球や白血球のほかにも血小板なども減少し、それが原因で呼吸困難や貧血などを引き起こします。, 稀ですが血液細胞が過剰に製造されるケースもあります。増幅し過ぎると、血管に詰まったり周りの細胞を破壊したりします。白血球がどんどん増幅していく症状から「白血病」と病名がつけられています。, また造血幹細胞よりも下流にダメージを受けると、赤血球のみを製造できず、白血球だけが増幅するケースも存在します。, 猫白血病ウイルス(FeLV)とは、ガンマレトロウイルスに属するRNAウイルスの一種で、自己複製と粒子生成に必要な「gag」「pol」「env」という遺伝子を持ったシンプルな構造をしています。, A、B、C、Tというサブグループに分かれており、猫に影響を与えるウイルスはAグループに属しています。ウイルスは感染している猫の唾液や鼻の粘膜、糞、尿、乳などに含まれているため、感染猫との通常接触の他にも様々な感染経路が考えられます。, 母猫から子へ感染する母体感染や食器やトイレの共有のような物を介しての感染、またグルーミングで感染することもあるため、社交的な猫の間で感染しやすいとされています。, FeLVのサブタイプの内、感染した全ての猫に総じて見られるのは「FeLV-A」タイプです。そのほかのサブタイプが体内で発生するかどうかは、感染した個体によります。, 全てのサブタイプを検査キットを使用し検出できますが、サブタイプ自体を見分けることはできません。, 山口大学が2008年に行った調査により、日本にはほかの国とは異なる独自に変化したウイルス系統があることがわかりました。, 調査チームが日本各地で収集された計216のFeLV陽性血液のサンプルを調べた結果、7つの系統分岐群を含む「G I」、独立している「G II」、2つの系統分岐群を含む「GⅢ」という日本特有の分類ができることが明白になりました。, 以上のことから、日本では世界で用いられている「A、B、C、T」というサブタイプではなく「G I、G II、GⅢ」というサブタイプを対象にして病原性の調査を行うべきであるとも考えられています。, 出典:子猫のへや「猫白血病ウイルス感染症(FeLV)~症状・原因から予防・治療法まで」, 先に述べた通り、FeLVに感染した全ての個体に見られるタイプです。免疫力の低下に関連しています。, 小腸や肝臓、腎臓、リンパ細胞などで見受けられる「高親和性チアミントランスポーター1(細胞受容体)」を通じて細胞内に侵入して、排泄物や血液、唾液の中に混ざります。, FeLV-Aとネコゲノムに含まれているFeLV-シークエンスが互いに作用することで誕生すると考えられるタイプです。, 「リン酸トランスポーター1(細胞)」を介して感染をします。各種腫瘍の形成に影響を及ぼすと考えられます。, 末梢血中に多く存在するTリンパ球に、生命の危機を与える恐れのある免疫不全を引き起こします。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染をしている猫の唾液や涙などの体液に含まれているウイルスを、口や鼻から取り込むことによって感染します。, 感染猫からつけられた傷を舐めたり、猫同士のグルーミングで舐め合ったり、食器の共有からも感染する可能性があります。, また母体から胎児へ母体感染するケースもあります。中でも胎盤感染をすると流産や死産をすることが多く、たとえ生まれても健康に育つことが難しいです。, 体内に入り込んだウイルスは血中のリンパ球によって全身へと運ばれて、消化管や脾臓のリンパ組織の中で増幅して骨髄内へ感染を拡大します。, 最近、猫などの小動物に寄生するネコノミが猫白血病ウイルス(FeLV)を媒介する可能性があることがわかり、感染源としてネコノミの存在を無視することができなくなりました。, ドイツの調査チームが2003年に猫白血病ウイルス(FeLV)を持っている猫の血液をネコノミに与えた結果、ノミの糞や体内からもウイルスが確認されました。, さらにノミを2つのグループに分けて、一つのグループにはウイルスを持っていない猫の血液を、もう一つのグループにはウイルスを持っている猫の血液を再度与えました。, その結果、ノミの糞や体内のみならず餌として与えた血液中からもウイルスが検出されました。ノミが血を吸う過程で体内に存在しているウイルスが外に出て血液を汚染したものと考えられます。, また2002年に日本大学の調査チームが、ネコノミが寄生している猫はFeLVの感染率が上がる傾向にあると報告しています。, 1種だけに限定される種特異性が高く、人間や犬などネコ科動物以外には感染することはありません。, 2004年8〜11月にかけて、アメリカとカナダの動物病院(345院)を受診した9,970頭と、動物保護施設(145箇所)に保護されていた8,068頭、計18,038頭の猫を対象に疫学調査が行われました。, 去勢されていないオス猫は活動範囲が広く、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染した猫との接触の可能性が高いです。, また発情期のメス猫を巡ってほかのオス猫と奪い合いのケンカをすることによって受傷し、そこからウイルスが感染する場合もあります。, 疫学調査でも、避妊手術を行っていないメス猫よりも去勢手術を行っていないのオス猫の方が2.4倍も感染リスクが高いことがわかりました。, 外で自由に生活をしている野良猫や放し飼いをされている猫は、様々な猫と触れ合う機会が多いため感染の確率はその分上がります。, 疫学調査によると、症状の出ていない室内で飼育されている猫よりも、症状が出ている放し飼いの猫の方が8.9倍も感染の確率が高かったとの結果が出ています。, 疫学調査で、7ヶ月以上の成猫の方が7ヶ月未満の子猫よりも2.5倍感染率が高いことが判明しました。, 猫の飼育環境を加味しない際の猫白血病ウイルス(FeLV)の感染率は、国によって大きく異なります。, 2002年に日本大学が日本の各地から1,088の血液サンプルを集めて調べた結果、その内2.9%(32サンプル)が陽性反応を示しました。, また2008年3〜10月に行われた山口大学の調査では日本各地から集めた1,770の血液サンプルの内12.2%(216サンプル)が陽性でした。, 2つの調査によりわかったことは、陽性率は地域により大きく異なり、南部地域の陽性率が高いということです。, 感染率に地域差が出る理由は解明されていません。飼育スタイルや気候、ネコノミの寄生率、猫密度などが要因として考えられます。, 健康な成猫の場合、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染をしても免疫構造がウイルスを撃退し発症しないケースもあります。, 生まれたばかりの子猫はウイルスに感染すると高確率で排除することができません。成猫の多くは自己免疫でウイルスを体内から排除できます。, 猫白血病ウイルス(FeLV)を排除できなかった場合、症状が出ていなくとも半年〜1年のスパンで定期検診を受けることを推奨します。, 猫白血病ウイルス(FeLV)を持続感染した個体の70〜90%は1年半〜3年の間に発症し亡くなっています。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染してから約1ヶ月程度で喉や口のリンパ節、血液の中に侵入したウイルスの影響が急激に現れます。, 病気や傷が治りにくくなる、下痢が続く、歯茎が白い、貧血などの症状が見られる場合、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の可能性があります。特に貧血は死亡原因にもなり得るため、注意が必要です。, また猫白血病ウイルス(FeLV)により引き起こされる主な病気は上記のようなものがあります。, 猫白血病ウイルス(FeLV)感染症は、進行の度合いや速さ、特徴によって4つのタイプに分かれます。, どのタイプに進行するかは、個体が先天的にもつ免疫力やワクチン接種の有無で変わります。, 体内に侵入したウイルスは、リンパ組織や骨髄、粘膜層などで増殖を繰り返し、次第に猫の免疫がそれに対抗できなくなって、数年で病に屈することになります。, 生後4ヶ月でウイルスに感染した場合、進行型に発展する可能性は15%ほどです。しかし生後2ヶ月未満で感染すると、ほとんどが進行型に発展し、その後数年の以内に死亡します。, 免疫応答がウイルスの増幅を抑え込んで、骨髄へ侵入する前にウイルスを体内から排除するタイプです。, ウイルスはDNAに埋め込まれていますが、ウイルス自体の複製や体外へ排出させることはできません。, 感染から2〜3週で抗原テストが陽性反応を示した後、2〜8週間で血中の抗原が自然消滅します。ただプロウイルスのDNAやウイルスRNAは、感染から約1週間でウイルスの核酸を検出する技術であるPCRによって検出されます。, そのため、抗原テストで反応がない場合でもPCR検査で陽性反応が出ることもあります。, 感染はしたものの、ウイルスや抗原、プロウイルスDNA、ウイルスRNAを検出できない状態です。, 猫白血病ウイルス(FeLV)が骨髄に到達すると、骨髄内にある造血幹細胞に感染します。血液細胞の正常な分泌を妨害し、血小板現象症や好中球減少症、赤血球異常に伴う再生不良性貧血が発症します。, 再生性の溶血性貧血や大赤血球症が発現することもありますが、その確率は10%未満です。, 骨髄内の造血細胞に猫白血病ウイルス(FeLV)が感染すると正常な白血球が生成されなくなります。そして悪性化したリンパ球がリンパ性白血病を発症させます。, 急性と慢性があり、急性は未熟なリンパ芽球が血液中で増加し、逆に慢性は成熟した悪性リンパ球が増加する特徴があります。, 正常なリンパ球が減少すると免疫力が低下し、健康な状態であれば病原性が低いノミやダニなどにも対抗できなくなります。, カリシウイルスやヘルペスウイルスなどの病原性ウイルスへの抵抗力も弱くなり、感染症にかかりやすくなります。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染したメス猫が妊娠すると、妊娠中〜後期に胎児の子宮内吸収や死亡、胎盤退縮などが起こります。, 子宮内にて胎児が死亡すると、好中球の数が減っている母体の子宮内膜症の発症リスクも高まります。, 無事出産した場合でも、胎盤やコロストラムからウイルスを取り込んでいる状態のため、生後間もなく命を落とすこともあります。, 原因不明の「新生子衰弱症候群」の中にも、垂直感染した先天性の猫白血病ウイルス(FeLV)が原因の症例も多く含まれていると推測されます。, 猫が患う悪性リンパ腫には猫白血病ウイルス(FeLV)が関係していることはほぼ間違いないです。それを裏付ける以下のデータがあります。, ・猫白血病ウイルス(FeLV)を体内に持っている個体がリンパ肉種を発症する確率は、ウイルスを持っていない個体の62倍である。 ・リンパ肉腫のうち70%は猫白血病ウイルス(FeLV)が原因。, 猫エイズウイルス感染症(FIV)は、猫白血病ウイルス(FeLV)の発症リスクを6倍に高めるうえ、リンパ肉腫の発症率を77倍までにも引き上げます。, はっきりとした発症のメカニズムは未だ解明されていませんが、腫瘍発症に関わるサブタイプFeLV-Bが起因しているものと思われます。, 猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の検査には「テキストキット検査」「PCR検査」「IFA検査」があります。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染をしてもすぐには陽性反応が出ないため、検査を行うタイミングが非常に重要となりす。, 陽性反応が確認できるのは、個体により差がありますが、基本的に感染から約4週間後からです。, また一度検査キットで陽性反応が出たとしても、自己免疫によりウイルスを排除できる可能性があります。, 感染から3〜6ヶ月経ってから再検査を行った際に陰性に転じる「陰転」が起こる場合もあるので、獣医師の話をしっかりと聞くことが大切です。, 病院で行う検査の精度は100%ではないので、検査するのに十分な量の抗原が現れるのを待ち、最初の検査から1ヶ月程度の間を開けてから再検査を行うことが望ましいです。, 病歴がわからない個体に対しては、全てにおいて猫白血病ウイルス(FeLV)検査を行うことが理想です。, テストキットによるウイルス抗原検査とは、猫白血病ウイルス(FeLV)を作るコアタンパクの一種である「p27」を検出する方法です。, 血液中に抗原が出現するか否かには個体差がありますが、通常は約1ヶ月で検出が可能になります。「抗体」を検出する方法ではないため、ワクチン摂取によって結果に紛れが生じることはないです。, また子猫が母体からの移行抗体を保持している場合、血中抗原は検出することが可能のため、できるだけ早急に検査を受けることが重要です。, 院内検査キットでのp27の検出は、末梢血液中の抗原を調べます。一部のキットを除いては、涙や唾液は汚染されやすいため基本的に使用されません。, PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査は、猫白血病ウイルス(FeLV)が遺伝子の中に保持する核酸(プロウイルスDNAやウイルスRNA)を血液中から検出する方法です。, 院内では検査することができないため、サンプルとなる血液や骨髄などを専門のラボに送ります。, ・感染から1週間程度でp27抗原を検出できる。 ・テストキットでは判明しないウイルスのサブタイプがわかることがある。, 抗原検査より検出の精度が高いとされ、抗原検査では陰性と判断されていた個体の5〜10%がPCR検査では陽性と判定されることがあります。, IFA検査(蛍光染色法抗体テスト)とは、血液細胞中のp27抗原を検出する外注の検査方法です。, 骨髄に感染が見られない個体や、感染していても白血球減少症の個体は偽陰性と判定されやすいです。, ・「感度」とは陽性のものを正しく陽性と判定する確率。 ・「特異度」とは陰性のものを正しく陰性と判定する確率。, ウイルスを保持していない個体を陽性と誤判定する「偽陽性」の報告も多いです。健康な個体が不必要な治療を受けることで逆に体調を崩したり、最悪の場合命を落とすこともあります。, 検査キットでの誤判定を避けるためには、1度の検査で判断せずに最低1ヶ月の間隔をおいてから別のキットやPCRでの再検査をおすすめします。, 猫白血病ウイルス(FeLV)は一度発症すると完治を目的とした治療方法はありません。苦痛を緩和しながら病気の進行を遅らせる治療を行います。, リンパ腫の場合には抗がん剤治療や放射線治療、外科手術を行います。また貧血の症状が酷い場合はステロイド剤の投与や輸血を、免疫力が低下する場合は抗生物質や免疫力を高めるインターフェロンを服薬するなど症状に合わせた治療を行います。, 糖質コルチコイドをはじめとした免疫抑制剤の使用は、酷い口内炎のように日常生活に影響を与え、生活の質を極端に低下させる恐れがある炎症性病変が見受けられる場合にのみ使用を考慮します。, ただ強い副作用があるので、抑制剤の使用を控え、潰瘍部分のレーザー切除や抜歯が優先されることもあります。, 猫に対しての作用が唯一確認されているのが「ジドブジン」(AZT、アジドチミジン)です。ウイルスの複製を阻止することが確認されています。, 血液中のウイルスの量を減少させる働きが期待でき、神経症状や口内炎を持った猫に有効ですが、日本国内では動物用医薬品として使用されていません。, ウイルスや腫瘍細胞の増殖抑制作用のある猫用製剤「ネコインターフェロン-ω(オメガ)」の使用が許可されている国がいくつかあります。, 「インターフェロン」とは細菌やウイルスなどの病原体やがん細胞のような異物に反応して体内の細胞が分泌するタンパク質の総称です。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫を対象にした調査で、ネコインターフェロン-ω(オメガ)を投与した個体と未投与の個体を長期間観察をしたところ、1年後の生存率が投与した個体の方が有意に高かったとの報告が上がっています。, しかしウイルスの数が減少したとの確認は取れておらず、生存率が伸びた理由は今だにわかっていません。, 現在日本で使用されているネコインターフェロンは、猫カリシウイルス感染症に働くとされる「インターキャット」(東レ)のみで、この薬品を猫白血病ウイルス(FeLV)や猫エイズウイルス感染症(FIV)に対して用いることは「オフラベル」(ガイダンス外使用)になります。, 米国ではアメリカ合衆国農務省(USDA)によって、猫白血病ウイルス(FeLV)と猫エイズウイルス感染症(FIV)に対する「LTCI」(T細胞免疫調整因子)の使用が許可されています。, LTCIはCD4の分化や成熟を助け、CD8の活性化を促して悪性腫瘍細胞や病原体への抵抗力を高めます。, CD4を保有する細胞がCD8を保有する細胞に対してサイトカイン(IL-2ほか)、ガンマインターフェロン(腫瘍細胞や病原体などに反応し、細胞が分泌するタンパク質の一種)を介して指示を送ることで体内の病原体や異物を取り除きます。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染した猫は短命になりますが、生活の質を保つことはできます。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染した1,000頭と未感染の8,000頭の猫の寿命を比較した調査では、感染猫の平均寿命は4.9年、未感染の猫の平均寿命は6年という数字が上がっています。, また別の調査では、感染猫800頭の平均寿命は2.4年、未感染の8,000頭の平均寿命は6.3年という結果も出ています。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染すると、寿命が1〜4年縮むことがわかっています。ただ感染したからといって即死亡するわけではありません。生活の質に気を付けてあげれば数年間は一緒に生活を共にすることができるのです。, 猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫と一緒に生活をする際に気を付けたいポイントを紹介します。, ・他の病気にかからない、そして他の猫に病気を移さないためにもなるべく室内で飼育をする。 ・ストレスを与えない。 ・食生活に気を遣う。特に生肉を与えるのは避ける。 ・いつでも新鮮な水が飲めるようにする。 ・感染をしても無症状のことがあるので、常に愛猫の様子を注意して観察する。 ・半年ごとに健康診断を受ける。また何か異変を感じたらすぐかかりつけの動物病院へ連絡する。 ・腎臓や肝臓の機能低下、貧血、リンパ節のシコリに気をつける。 ・症状が出ていなければ、ほかの感染症にかからないように予防接種を受ける。 ・多頭飼いをしているならば、必ずウイルス検査を受けて陰性であったならばワクチン接種を行う。 ・原虫(コクシジウムほか)や内部寄生虫(回虫や条虫)、外部寄生虫(ノミやダニ)の駆除を行う。 ・定期的な体重計測。 ・病変はないか口腔内をこまめにチェックする。 ・リンパ肉腫の有無をこまめにチェックする。, 猫白血病ウイルス(FeLV)への感染を予防したい場合、一番重要となるのは感染している猫との接触を避けることです。, 飼育している全ての愛猫の生活環境を完全に室内のみに限定し、ウイルスを保持している猫との接触を断絶します。, ウイルスを貰わないため、そして感染している場合にはウイルスをほかの猫に移さないためにも重要なことです。, 母から子への垂直感染を起こさないために、ウイルスに感染しているメス猫には避妊手術を行い繁殖を制御します。, 退行型感染の場合、事前の抗原検査で陰性であったとしても妊娠による免疫力の低下でウイルスが活性化して子に移る可能性もあります。, PCR検査ならより高い確率でウイルス感染の有無を判定できます。しかしその精度は100%ではありません。, 発情によるストレスも軽減され、免疫力が低くなっている際にかかりやすい二次感染を防げます。, 消毒をすることで付着した猫白血病ウイルス(FeLV)を取り除くことはできますが、医原性感染の可能性は否定できません。, 動物病院内での手術や注射器、診察台、聴診器などから院内感染するケースもあります。過去に行われた調査で、使用した聴診器をしっかりと殺菌消毒せずに使用している獣医師が多いことが判明しています。, 病院から帰宅をしたら、まずは飼い主さんが石鹸を用いて手洗いをしっかり行ってください。そしてペット用のウエットシートを使用し愛猫の体を軽く拭きます。, レトロウイルスは体内以外での生存力が弱く、石鹸や消毒液で簡単に死滅させることが可能です。, 猫白血病ウイルス(FeLV)は1964年に医師であるウィリアム・ジャレットの報告でメジャーな研究対象になりました。1973年には診断テストが、1986年にはワクチンが開発され、感染率が格段に減りました。, 注意しなくてはならないのは、ワクチンは予防を目的としたものではなく、感染した際に症状を抑えるもののため、「ワクチンを打ったから感染しない」と油断しないことが大切です。, またワクチンを打っても十分な免疫力を得られない可能性もあるので、症状の悪化を100%防げないのが現状です。2013年に山口大学が行なった調査でも、猫白血病ウイルス(FeLV)ワクチンを打った286頭のうち6.3%(18頭)がウイルスに感染したとの報告があります。, またすでに感染をしている個体に猫白血病ウイルス(FeLV)ワクチンを接種しても意味がないので、事前の確認が必要です。, 初回接種の後、約1ヶ月後に2回目の接種を行います。その後は1年に1回のペースで定期的な接種を続けます。ほかの猫と接触をしない場合はワクチン接種の必要はありません。, 普段聞きなれない猫白血病ウイルス(FeLV)ですが、意外にも私たちの身近に存在しているウイルスです。, 家の外にも自由に出られるような環境下で愛猫を飼育している場合は、感染の可能性が高いので特に注意が必要です。, ・猫ウイルス性鼻気管炎/猫カリシウイルス感染症/猫汎白血球減少症/猫白血病ウイルス感染症, ・猫ウイルス性鼻気管炎/猫カリシウイルス感染症/猫汎白血球減少症/猫白血病ウイルス感染症/猫クラミジア感染症.